大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(ネ)1142号・昭49年(ネ)1213号 判決

当裁判所は、次のとおり判決する。(以下、東洋熱工業株式会社を参加原告、

株式会社東京相互銀行を脱退原告、三利建設株式会社を参加被告という。)

主文

原判決を左のとおり変更する。

参加被告と参加原告との間において、原判決添付第一物件目録記載の土地につき、参加被告が堅固の建物所有の目的、存続期間は昭和四一年一二月二〇日から六〇年の地上権を有することを確認する。

前項記載の地上権の地代を、昭和四五年一二月三日当時において月額金九、五五一円、昭和四八年一月一日当時において月額金二万五、九二五円と定める。

参加原告の請求を棄却する。

訴訟費用(参加費用を含む)は、第一、第二審とも参加原告の負担とする。

事実《省略》

理由

一参加原告主張の請求原因について

参加原告が昭和四五年一〇月三一日脱退原告から本件土地を買受け、その所有権を取得したこと、参加被告が本件土地上に本件建物を所有して本件土地を占有していること、以上は当事者間に争いがない。

二法定地上権の成否及びその内容について

(一)  株式会社陣屋多門(以下、陣屋多門という)が昭和三九年九月三〇日当時、本件土地及びその地上にあつた旧建物(木造二階建工場及び付属建物)を所有していたこと、陣屋多門は本件土地につき脱退原告のため昭和三九年九月三〇日一番根抵当権を、同年一一月七日二番根抵当権を、昭和四〇年二月二六日三番根抵当権を、それぞれ設定する契約をしたこと、右一番及び二番の根抵当権設定当時、本件土地上に旧建物が存在していたが、三番抵当権設定当時、旧建物が存在していなかつたこと、脱退原告は本件土地につき昭和四一年三月二六日競売開始決定を得、同年一二月二〇日自ら競落して代金を支払いその所有権を取得したこと、以上の事実は当事者間に争いがない。

ところで、競売は目的不動産上のすべての抵当権のために一括して清算するものであるから、一番抵当権の関係上法定地上権の成立が認められなければ、結局その成立を否定するほかはないので、本件の場合後順位の抵当権の関係は措き、本件土地につき前記一番根抵当権の関係で法定地上権の成立が認められるかどうか検討する。

<証拠>を綜合すると、次の事実が認められる。

陣屋多門は、菓子製造業を営んでいたものであるが、従来使用していた工場が手狭なため、昭和三九年九月ころ本件土地上の旧建物で自動車部品工場を営んでいた山本精二から、本件土地及び旧建物を同所に新工場を建築する予定で買受けたものである。そして、その買受資金については、かねてから融資を受けていた脱退原告に更にその貸付けを懇請し、脱退原告は、本件土地に前記一番根抵当権(昭和三九年一〇月一六日設定登記、元本極度額金五、〇〇〇万円。なお陣屋多門の本社建物及び敷地を共同担保とした。)の設定を受けたうえ、右買受資金二、五〇〇万円を陣屋多門に貸与した。

前記のように陣屋多門は、本件土地上の旧建物が菓子製造工場には適さないため、近い将来これを取壊し本件土地に新工場を建築し、従来の工場を同所に移転することを当初から予定しており、脱退原告もこれを承知していたので、あえて旧建物については抵当権設定を受けなかつた。しかし、陣屋多門は脱退原告に対して当時すでに多額の債務があり、更に新工場建築のための資金を借受けることが直ちにはできない事情にあつたので、しばらくは旧建物を材料置場、車庫等として使用し、営業及び資金事情をみたうえ新工場を建築することとし、その旨脱退原告も了解していた。なお、旧建物は工場であり、本件土地はその工場用地として、その敷地部分のみならずその全体が不可分的に旧建物のため利用されていたものであつて、陣屋多門がこれを買受けた後もその状況は変らなかつたものである。ところが、右新工場の建築を請負うことになつていた西組建設が資金ぐりの都合上、新工場建築工事の早期施行を求め、陣屋多門としても、できることなら早く新工場を建築して同所で操業を始めたいと考えていたところから、陣屋多門は、大成温調工業株式会社から融資を受けて工事代金を調達したうえ昭和三九年一一月ころ旧建物を取壊して本件建物(鉄筋コンクリート造五階建工場)の建築に着手した。この建築については、右着手後陣屋多門から脱退原告に了解を求め、脱退原告としては、従前の了解と異るところから不満を示したものの、結局本件建物に一番抵当権の設定を受けることを予定してこれに同意し、係員を派遣してその工事契約書をみたり、工事進捗状況を視察したりしていたものである。本件建物は、昭和四〇年一月ころ、躯体ができ上つたものの、そのうち西組建設が倒産したため工事が遅れ、昭和四〇年四月ころようやく完成して同年六月一六日陣屋多門名義にその保存登記を了した。そのころ本件建物についてどちらが一番抵当権の設定を受けるか大成温調工業株式会社と脱退原告との間に利害が対立し、右保存登記も遅れたのであるが、結局右登記の日に大成温調工業株式会社のための一番抵当権設定登記を経由し、同年八月一〇日脱退原告のため二番抵当権設定登記がなされた。

(二)  ところで、建物の存在する土地に抵当権を設定した後、右建物が滅失して再築された場合にも、法定地上権は成立するものと解せられ、このことは本件のように抵当権設定当時旧建物が近い将来取壊され再築される予定である場合も同様であると考えられる。本件において、陣屋多門が旧建物を取壊すことにより本件土地を継続して使用することを放棄したものとは認められず、また本件建物の再築が本件土地における建物使用の都合上行なわれたことは明らかであつて、他に右法定地上権の成立を妨げるべき事情は認められない。そして、このようにして成立する地上権については、通常は、旧建物が存在する場合と同一の範囲内の地上権が成立するものと解されるが、これは抵当権者が土地につき抵当権の設定を受けるに際して、その上に建物が存在すれば、当該建物についての地上権が成立することを予期して担保価値を算定するものであるから、その予期に反する結果を生ぜしめないためである。しかしながら、本件における前記事実関係においては、抵当権設定当時脱退原告は、近い将来旧建物が取壊され、堅固の建物である新工場が建築されることを予期していたものであり、これを度外視して本件土地の担保価値を算定したものとは認め難く、さらに新工場である本件建物の建築が脱退原告の予期に反し早期に行われたが、脱退原告は結局これを承認し、その建築状況も視察したうえ、本件建物に一番抵当権の設定を受けることを予定していた(結果的には大成温調工業株式会社の抵当権設定登記に遅れたが)など前記認定の諸事情のもとでは、本件土地につき法定地上権が成立する場合には、右法定地上権は、本件建物すなわち堅固の建物所有を目的とするものとなると認めるのが相当である。

以上のとおりであるところ、前記のように脱退原告が本件土地につき競売開始決定を得、昭和四一年一二月二〇日自らこれを競落してその所有権を取得したのであるから、本件建物の当時の所有者である陣屋多門と脱退原告との間に法定地上権が発生したものというべく、前記理由により陣屋多門は脱退原告に対し、本件土地につき本件建物すなわち堅固の建物所有を目的とする法定地上権を取得したものといわなければならない。なお本件土地が旧建物の工場用地として、その敷地のみならずその全体が不可分的に旧建物のため利用されていたことは前記認定のとおりであり、本件建物についても同様であるから、本件土地の右法定地上権は建物敷地部分だけでなく、その全体について成立するものというべきである。

(三)  参加原告は、陣屋多門が脱退原告に対し、旧建物を取壊して更地とし、本件土地につき建物敷地としての利用を継続しない旨を約し更地として抵当権を設定したと主張する。しかし、かゝる事実が認められないことは前記認定のとおりであり、<証拠>中、右主張に添う部分は措信できず、他にこれを認めるべき証拠はないから、右主張を前提とする参加原告の再抗弁は採用できない。

三参加原告の請求について

参加原告が脱退原告から昭和四五年一〇月三一日売買により本件土地の所有権を取得したこと、本件建物については、大成温調株式会社が一番抵当権の設定を受け、同会社は昭和四一年四月五日競売開始決定を得、昭和四五年一二月三日参加被告がこれを競落して代金を支払い、その所有権を取得したこと、以上は当事者間に争いがない。したがつて、参加被告は本件建物に付随するものとして本件土地につき前記堅固の建物所有を目的とする法定地上権を取得したものというべく、他方参加原告は脱退原告から右法定地上権の負担を承継したものというべきである。

したがつて、参加被告の抗弁は理由があり、参加被告に対し本件建物を収去して本件土地を明渡すことを求める参加原告の請求は、失当であるから棄却を免れない。

四参加被告の請求について

参加被告が参加原告に対し、本件土地につき堅固の建物所有を目的とする法定地上権を有することは前記のとおりであり、右法定地上権の存続期間について当事者間に合意が成立したと認めるべき証拠はないから、借地法第二条の適用により昭和四一年一二月二〇日から六〇年となる。

したがつて、参加原告に対し、参加被告が本件土地につき堅固の建物所有の目的、存続期間昭和四一年一二月二〇日から六〇年の地上権を有することの確認を求める参加被告の請求は正当として認容すべきである。

そして、<証拠>によれば、本件土地に対する堅固の建物所有を目的とする地上権の地代相当額は、昭和四二年七月一日当時においては月額金九、五五一円(3.3平方メートル当り金八四円であることが認められるから、参加被告が前記地上権を取得した昭和四五年一二月三日当時における右地代相当額は少くとも右月額金九、五五一円と認めるのが相当であり(これと異る額を確認できる証拠はない。)、また<証拠>によれば、昭和四八年一月一日当時における右地代相当額は月額金二万五、九二五円であることが認められ、他に右認定を左右する証拠はないから、右各金額をもつて昭和四五年一二月三日及び昭和四八年一月一日当時における地代と定めるのが相当である。

五結論

以上のとおりであるから、以上の判断と異る原判決を主文のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第九二条、第九四条を適用して、主文のとおり判決する。

(外山四郎 篠原幾馬 小田原満知子)

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